特定労働者派遣事業の廃止「許可基準をクリアしていることの安心感」

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2016年04月18日

転職を考える皆さんにお届けしているトライアローラボコラム企画。
引き続き今回は2015年の改正派遣法の「特定労働者派遣事業の廃止」についてお送りします。

2015年改正労働者派遣法により、従来あった特定派遣という契約形態がなくなることが決定しました。
今回は、特定労働者派遣事業とはそもそもどのようなものだったのか、なぜ廃止されたのか、特定派遣の廃止が派遣労働者にどんな意味をもたらすのかといったことについて解説します。

●2018年問題について●

派遣法改正から3年が経過したことにより、2018年秋にいわゆる「2018年問題」が発生します
2018年問題については詳しくはこちらをどうぞ

特定労働者派遣事業とは何だったか

旧法上の特定労働者派遣事業とは、労働者が派遣会社に「常時雇用」されていることを条件とした派遣事業のことです。

もともと、IT企業や製造業への技術者の派遣を行う業者を対象に作られたもので、それ以外の一般労働者派遣事業とは別のくくりになっていました。
派遣会社と労働者の間に正規の雇用契約があることから、労働者は安定した収入や職場を与えられると考えられ、事業認可は厚生労働大臣への「届出制」となっているなど規制がゆるやかでした。

しかし現行制度では、この特定労働者派遣事業に関する条文は削除され、一般労働者派遣との区分がなくなりました。
特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の2つが統合され、すべて「許可制」になったということです。

労働者派遣事業の許可基準とは

それでは、労働者派遣事業の認可基準とはどのような内容なのか見ていきましょう。
まず「財産的基礎の許可基準」は、従来から次のように定められています。

・資産-負債(基準資産額)が2,000万円×事業所数以上であること。
・自己名義現金預金額(資産の中の現金)が1,500万円×事業所数以上であること。
・資産-負債が負債の7分の1以上であること。

これに加え、これまで特定派遣だった事業者のためには、「2015年9月30日から当分の間」という一定期間に限って、常時雇用している派遣社員が10人以下の中小企業では資産-負債が1,000万円以上、自己名義現金預金額が800万円以上であればよいなど、暫定的な配慮措置も設定されています。

こうした事業者の資産等に関すること以外には、次のような基準があります。

専ら派遣でないこと
「専ら派遣」とは特定の会社などにのみ労働者派遣事業を行うことです。
労働者派遣事業者は、その専ら派遣を目的にしていないことという条件があります。

派遣元責任者について
派遣元責任者は、雇用管理の経験、職業安定行政または労働基準行政の経験、民営職業紹介事業の従事者としての経験、労働者供給事業の従事者としての経験のいずれかを3年以上有すること、職業安定局長に開催を申し出た者が実施する「派遣元責任者講習」を受講した者とされています。

個人情報について
個人情報を適正に管理し、派遣労働者等の秘密を守るために必要な措置が講じられていることとされています。

労働保険、社会保険について
派遣元事業主が派遣労働者の福祉の増進を図ることが見込まれるなど、適正な雇用管理を期待し得るものである必要があります。 労働保険、社会保険の適用などが該当します。

教育訓練について
派遣労働者に対する能力開発体制、すなわち、適切な教育訓練計画の策定、教育訓練の施設、設備等の整備、教育訓練の実施についての責任者の配置などが整備されていることとされています。

事務所について
事業に使用する面積がおおむね20平方メートル以上でなくてはいけません。

派遣労働者にとっての安心というメリット

先にも触れたように、特定労働者派遣事業は本来、派遣労働者に働きやすい環境を提供するべく設けられたものでした。
しかし、届出のみで個人でも開業できたために、事業者が乱立。
「常時雇用」という条件にも法的な定義はなく、例えば1年ごとの有期雇用を繰り返すことで体裁のみ常時雇用のように見せかけられるというルールの抜け道がありました。
結果的に、特定労働者派遣事業は、制度の目的と実態との間にギャップが生じてしまったといえます。

しかし、今回の労働派遣法改正によって不健全な派遣業者は淘汰され、派遣労働者のリスクは軽減されていくはずです。
すべての派遣業者は厳しい許可基準をクリアしなければならず、業界全体のコンプライアンス意識も高まっていくことでしょう。
派遣労働者にとって、働きやすい環境が整うための第一歩になると期待しても良いのではないでしょうか。

なお、特定労働者派遣事業の廃止は一気に行われるのではなく、社会的影響を緩和するため、2015年9月30日から2018年9月29日までの間は「経過措置」がとられます。
派遣業者はこの3年間のみ、新設以外であればそのまま特定労働者派遣事業を営むことが可能です。
ただし、その後も派遣事業を続ける場合には、上で述べた許可基準を満たして許可を得なければなりません。

特にこれまで特定派遣で働いていた人などは、こうした経緯を知っておくと良いでしょう。


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