プラントエンジニアとは?仕事内容や働き方、やりがいやブラックという噂の真相を解説

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2023年01月18日

皆さんは「プラントエンジニア」と聞いてどんなイメージを浮かべますか?
プラントとは工場設備のことで、発電所や浄水場、食品工場等の工場設備一式を指します。工場の仕事と聞くと作業をしている人を思い浮かべると思いますが、プラントエンジニアとは、そのプラントの設計や開発、建設からメンテナンスなどを行う仕事です。
私たちは日々電力を使い、水を飲み、プラントでつくられたモノを利用して暮らしています。それにも関わらず、プラントの具体的な定義やイメージを思い浮かべられる人は多くないのではないでしょうか。今回は、プラントの具体的な定義や分類から、プラントエンジニアの働き方、激務やブラックという噂や、プラントエンジニアならではのメリット、働きがいにいたるまで、広く解説していきます。

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目次

プラント業界の分類 - プラントエンジニアが働く場所はどんなところ?

冒頭の通り、プラントとは工業活動に必要な素材や資源を作り出す生産工場のことを言います。そしてプラントエンジニアは、工場のラインで働く作業員ではなく、工場そのものを作る人とイメージするとわかりやすいでしょう。
プラントにはいくつか分類があり、それぞれ製造するモノが違います。下記にプラントの種類をまとめました。


三重県四日市の工業地帯に林立するプラント群

製品系 - 石油・化学・鉄・非鉄等

「プラント」と聞いて、皆さんが最初に思い浮かべるのがこの種類のプラントだと思います。配管がむき出しで、昼夜問わず稼働している工場群をイメージしてもらえるとわかりやすいでしょう。このプラントでは化学反応を利用して原料を反応・分解し化学物質を生産しています。

一般的に化学プラントと言えば石油化学プラントのことを指します。石油化学プラントでは原油を蒸留して、沸点の違いを利用して様々な製品に分解しています。私たちの身近にあるガソリンや灯油などもこの化学プラントで原油から精製されています。

他にも、製鉄プラントと呼ばれる分類の工場では、鉄鉱石・石炭・石灰石を利用し、溶解炉で熱して不純物を取り除くことで純度の高い鉄を精製しています。


石油化学プラントは、原油を分解して様々な燃料や製品を作り出す

常に高熱を発する製鉄プラントは、炎を放つ高い煙突が特徴的

エネルギー系 - 電気・ガス等

電気は私たちの生活になくてはならない重要な存在です。そんな電気を作っているのが「発電プラント」になります。発電プラントと聞くとイメージしにくいですが、いわゆる「発電所」のことを指します。発電所ではタービン発電機を回すことで電気をつくっていますが、タービンを回す方法の違いによって名称が違います。化学燃料を燃焼させて、蒸気の力によってタービンを回す火力発電や、ダムなどの高い場所から水を落下させることでタービンを回す水力発電、その他太陽光発電、風力発電、地熱発電、原子力発電など、様々な種類の発電プラントがあります。

また、ガスを作るプラントのことを「LNGプラント」と言います。LNGプラントはガス田から取り出した天然ガスから不要物や水分、環境汚染物質などを除去して、-162℃以下まで冷却することで「液化天然ガス」を製造しているプラントのことを指します。液化させることで天然ガスと比べておよそ1/600まで体積を減らすことが出来ます。これにより運送や貯蔵の効率化が可能になります。


ドーム型のタンクが特徴的なLNGプラント

環境系 - 廃棄物・水処理等

最後にご紹介するプラントは「環境系プラント」です。環境系プラントとは廃棄物処理場(ごみ処理場)内において、再利用可能な資源の回収をしたり、ゴミを燃やす際に出る熱を利用して発電を行ったりしています。他にも、食品廃棄物に含まれている炭水化物を発酵させることでエタノールに変えるシステムを指すこともあります。その他下水処理場や廃プラスチック処理施設など、環境に関わるプラント全般のことを環境系プラントと呼びます。

プラントエンジニアの具体的な仕事内容とは?

次は実際に行われているプラントエンジニアの仕事の内容と流れを見ていきましょう。仕事の内容を知ることでプラントエンジニアについてのイメージがしやすくなります。

基本設計

基本設計とは、読んで字のごとくプラントを建設する際の基本的な設計をする業務のことです。プラントは無数の機械の集合体です。そんなプラントを最初からいきなり細かく設計していくことはかなり難しいと言えます。ですので、最初に大枠の設計をしてから徐々に細かなプランを立てていくのです。基本設計では、そのプラントが最も効率よく目的を果たすための装置の組み合わせや配置を考え、原料の温度・圧力・流量を決め、設置する機材の大きさや全体の構造を決定していきます。

詳細設計

基本設計の次は詳細設計に移ります。基本設計で大まかに決めた装置ひとつひとつの設計をしていきます。燃焼炉や熱交換器、ボイラーなどといった機器を設計する「機械設計」、気体や液体を効率的に送るためのパイプの配管を設計する「配管設計」、プラントを動かすための電力設備と制御システムの設計を行う「電気設備設計」、コンプレッサー、ポンプ、タービンなどの回転機を設計する「回転機械設計」など、様々な設計を各エンジニアが分担して進めて行きます。

部品・資材調達

設計した機器仕様書を元に各機械メーカーに見積もりを依頼します。見積もりと仕様を比較し、費用や工期などを加味して採用するメーカーを決めます。メーカーが決まった後は、要求仕様の確認の打ち合わせを行い、メーカーが作成した設計図書が要求に合っているかを随時確認していきます。最後に、完成した機器が仕様書の通りに作製されているか、不具合は無いかをしっかりと確認します。

建築・施工管理

基本設計をしたプラントエンジニアがかかわることの多いフェーズです。設計図通りにプラントが建設されているかを確認し問題なくプラントが建設できるようにします。
プラントでは施工管理という役割を持った人がいます。施工管理とは、作業員の安全を守るためのリスク管理や工期内で終わらせるためのスケジュール管理、管轄の行政機関への届け出や書類の作成など、各工程の全体像を把握して調整をする立場の業務です。また、安全管理や関連する法令のチェックなど、エンジニアが安心して働ける環境づくりなども行います。施工管理はプラントでの作業では必要不可欠な存在と言えます。


プラント業界における施工管理について

プラント業界における施工管理について詳しく知りたい方は下記のページにて施工管理に絞った解説を行っていますので、ぜひご覧ください。


試運転

最後に、いよいよプラントの試運転を開始します。まずは設計した仕様通りに機器が動作するか、プラント全体に要求されている性能が発揮できているかを確認していきます。また、安全面にも不安がないかチェックしながら、試験的に運転を開始していきます。

保守

プラントが完成したあともプラントエンジニアの仕事は続きます。その代表的な業務がプラントの保守管理です。定期的に機器の点検を行い、確認や修理を行います。

プラントエンジニアに必要な資格やスキルは?

プラントエンジニアになるために必須な資格はありません。しかし担当するセクションによっては、必要な知識や有利になる資格やスキルがあります。

求められる知識

・機械系エンジニア
プラントの基本設計、詳細設計、構築、メンテナンス、機械装置の設計開発を行います。機械工学の知識が必要になります。

・化学系エンジニア
燃料や薬品など原料から製品化する製品の製造過程開発や設備設計を行います。応用科学や化学工学の知識が必要になります。

・電気系エンジニア
プラント内の電力供給システムや制御システムなどの電気系統の構築・マネジメントを行います。電気・電子工学やシステム工学、制御工学の知識が必要になります。

・土木系エンジニア
プラントの建設やその周辺の土地の整備・開発を行います。周辺といっても基盤となる土地や港湾、道路など幅広く土木工学や建築工学の知識が必要になります。

有利になる資格

関連する資格は「技術士」(建設、機械、化学、環境、衛生工学、上下水道等)や「一級建築士」、「エネルギー管理士」、「高圧ガス製造保安責任者」、「ガス主任技術者」、「公害防止管理者」、「施工管理技士」(管工事、建築、土木、電気工事等)、「電気主任技術者」、「情報処理技術者」など担当セクションにより様々です。施工管理に携わるのであれば、4,000万円以上の請負契約時に配置が必要となる「監理技術者」などもあると有利です。他、プラントエンジニアになるにあたって特に有利になる資格は「CAD利用技術者試験」と「機械設計技術者」の資格も挙げられます。

ただし、就労時点ではそこまで資格を必須としていないポジションも多数あります。ですので、就労してから必要な資格取得をする形でも問題ありません。

未経験からでもプラントエンジニアは目指せるのか?

現在、広く知られている通り建設業界では慢性的な人手不足です。当然プラント業界も例外ではありません。そのため、未経験者を採用する企業も多くあります。特に施工管理の仕事は各セクションの専門家とは違い、法的手続きやスケジュール管理といった仕事が中心なので、理工学系の専門知識が必ずしも必要ではなく、未経験から目指せる職業であると言えます。

また、先ほど関連する資格やスキルを取り上げましたが、最初からすべての資格を持って就職するのは珍しいケースです。現実的には業務上で必要になったら時点で資格を取得することが多いため、長く続ければ続けるほど経験も取得資格も増えて行くのがプラントエンジニアの特徴です。

プラントエンジニアとして働く魅力やメリットとは?

未経験から始めることのできるプラントエンジニアには、魅力やメリットがたくさんあります。今回ご紹介するメリットが自分の求めているものであるかチェックしてみましょう。

高収入を目指せる

元々、建設業界そのものが他業種と比較して給与が高い傾向にありますが、プラント関連の職種はその中でも更に高待遇であるのが魅力です。事実、建設業界における施工管理の平均年収は約630万円ですが、その中でもプラント・エネルギー分野に絞ると約725万円となります(※1)。日本全体の就労者の平均年収が436万円(※2)であることを考えると、比較的高待遇な業種・職種と言えます。

それに加えて、事故の発生率の低さや、工期の厳守率などによって成果報酬が設定されている場合もあります。そのため、自身の経験やスキルによってさらに報酬が上がっていく仕組みになっています。また、資格手当が充実している会社も多く、自分のスキルを伸ばして報酬をもらいたい人にとってうってつけの職種であると言えます。

※1 建設・設備求人データベースを運営する株式会社クイック調べ
※2 国税庁 令和元年分 民間給与実態調査より

需要が安定している

日本の産業は成熟期に入っていて新規プラントの建設は限界が見えてきているという現状はあります。しかし、プラントには他の建物と同じく耐用年数があります。そのため、一定期間を過ぎると建て替えをする必要があるのです。したがって、プラントが存在し続ける限り、プラントエンジニアの仕事は無くならないということになるのです。
さらに、プラントは規模が大きく、化学物質やエネルギー、水などといった日本経済のインフラといえる物質を扱っているので、保守・点検や修理などの頻度や基準が通常の建築物よりも厳格に定められています。つまり、新規の建設以外にもメンテナンスの仕事は常にあります。また、世界的な問題となっている二酸化炭素削減のため、プラント業界も省エネルギーや効率化に向けた新たな技術を取り入れたプラントの開発が進んでいます。

また、プラントには「定修」という一定期間プラントの操業をすべて停止し、集中的に点検と修理を行わなければならないルールが法律で定められています。この定修の際にも、多くのプラントエンジニアが必要となります。
このように、プラントに関わる職種は安定性の高い仕事であると言えます。


プラント業界における定修について

プラント業界における定修について詳しく知りたい方は、下記のページにて定修業務に絞った解説を行っています。ぜひご覧ください。


会社に依存しない働き方ができる

プラントエンジニアは安定したニーズがあり、高収入であるため、技術や経験があれば転職も容易に行うことができます。また、仕事をしている中で身につけた技術や資格は持ち運びができる一生モノのスキルとなるため、特定の会社に依存することなく働くことが可能となります。

更に、プラント関連の職業ではプロジェクト単位でニーズがあるため、プロジェクトとプロジェクトの間に長期の休暇を取ることもできます。そのため、長期の旅行に出かけたり、今後の待遇アップのために資格の取得に励んだりなど、他の職業ではなかなか実現できないような自由な過ごし方ができるのが魅力です。

グローバルに活躍できるチャンスがある

国外にも日本のプラント技術を求めている国は複数あります。特に、中東や東南アジアなどの発展途上国を中心として需要が高まっていて国外での新規プラント建設の潜在ニーズも増えているといわれています。その需要を受けて国外でもビジネス展開をする企業が増えており、大手企業を中心に海外でのプラント建設や海外企業との取引をしている企業もあります。グローバルに活躍ができる仕事といえます。

プラントエンジニアはキツイ?ブラック? 噂の真相とは

プラントエンジニアの仕事は決して楽な仕事ではないのは間違いありません。プラントエンジニアとして働く中で一番のストレスの要因となるのは、他のどの職種よりも納期の厳守が求められる点です。
プラントはとにかく規模が大きく、公共性の高いインフラを担っているため、一日稼働日数が少なくなるだけで発生する損失も莫大です。そのため、納期前になると残業が増え、長時間労働になることも少なくありません。プラント業界についてインターネットで調べると、ブラックやキツイといった検索結果を多く見かけるのはそのような環境が原因であると言えます。

しかし、最近では建設業界全体で労働環境の改善に取り組んでいます。特に、近年では「建設現場の近代化」を掲げており、IoT技術を駆使した建設現場の効率化を国レベルで推進しています。(国土交通省が推進するi-constructionを参照)
建設業界では他の業界よりもIT化が遅れていましたが、逆に考えるとIT化が進むことによる効率化の範囲が広く、生産性や労働環境の改善の余地が大きいと考えられます。そのため、ITの知識を有しているプラントエンジニアの市場価値は更に高まる可能性が高く、より高待遇を狙えるでしょう。

プラントエンジニアはこんな人にオススメ

プラントエンジニアの仕事は魅力がある反面、決して楽な仕事ではないことはおわかりいただけたと思います。この章では、プラントエンジニアに向いている人の特徴をご紹介していきたいと思います。

一生を技術者としてまっとうしたい人

プラントエンジニアはまさに「手に職」の世界といっても過言ではありません。そのため、黙々と作業に取り組みたい人や、職人気質の人はプラントエンジニアにとても向いています。また、エネルギーや素材、水などのように、生活に必要不可欠なものを扱っているので、一度技術を取得してしまえば職に困ることは少ないと言えます。

ものづくりにやりがいを見出せる人

プラントエンジニアとして働く上でのやりがいの中に、大規模なプラントの設計に関われるという点があります。自分の関わったプラントが少しずつ機能していき、最終的に人々の生活に役立っていると感じられることはなによりも大きいやりがいになります。様々ある製造工場の中でも、プラントは最も「ものづくり」の醍醐味を味わえる職場と言えるでしょう。

高収入を目指したい人

前述したとおり、プラントエンジニアは他の職に比べて給与が高い傾向にあります。さらに、未経験でも仕事をしていく中で経験や技術を身につければ、さらに高収入を目指すこともできます。そのため、未経験からでも高収入を目指したい人にはプラントエンジニアはうってつけの職業と言えます。

プラントエンジニアとしてオススメしたい働き方

プラントエンジニアとして働く上でひとつおすすめしたい働き方があります。それは「技術者派遣」という働き方です。前述したとおり、プラントエンジニアの場合は柔軟な働き方が可能です。「プロジェクトとプロジェクトの間に長期の休みが欲しい」「休みを減らしてプロジェクトをこなしてとにかくお金を稼ぎたい」など人によって望んでいる働き方は異なります。

また、働く場所も「家族がいるからあまり離れた地域にはいきたくない」「海外でもどこでも経験や収入になるなら引き受けたい」など希望は様々です。「技術者派遣」であれば、このような自分の希望している条件を満たしてくれて、なおかつ自分のスキルで入れるプロジェクトを探してくれるため、自分でプロジェクトを探して来る手間が省けます。

化学プラントの設計事務所として創業したトライアロー

私たちトライアローは、主に建設・通信・IT系の技術職を得意とする派遣会社です。1979年の創業当時は、化学プラントの設計事務所としてスタートしました。プラントの建設には実に多種多様な人材が集まるため、そこでできた人的ネットワークをより業界のために役立てたいと考え、1986年に派遣法が整備されると同時に派遣事業に参入。長く化学プラントの設計や建設、メンテナンスに携わってきた当社ならではのお仕事もご用意しています。

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