業務の効率化のために積極的にIT技術を採用してきた森崎さんですが、それと同じくらい、現場の創意工夫も大切だと言います。
森崎:IT業界では日々新たな技術が登場して、そういった技術が私どもの業界でどのように役立てることができるかを考え続けるのはとても重要なことです。一方、現場で働く人間にしかでき得ない発想やアイデアもたくさんあり、IT技術と現場の創意工夫の両輪が組み合わさることで、建設業界の可能性は広がっていくと思います。
実際に寿建設の中でも、現場の皆さんのアイデアで生産性が劇的に上がった例が最近もあったそうです。
森崎:全長3,000m以上ある長いトンネル工事で坑内全線に敷いたレール(線路)には、工事の経過の中で土などがビッシリとこびりついてしまうのです。
工事の最後に3,000m分のレールを一気に撤去しないとならないのですが、工具を使って人力で行うそのこびりつきの除去、清掃に大変な手間がかかることが見込まれました。

土がこびりついた線路 寿建設 公式noteより
現場の人間が“レールを器具で挟んで重機で引っ張ったら一気に土を剥がせるのでは”というアイデアを思いつき、実際にレールを挟む金属製の器具を作ってみたんです。そうすると狙い通り一瞬で土を落とすことができるようになり、一気に作業が効率化されたんです。作業量にして数十分の1くらいになりました。

線路の大きさに合わせたボックス状の器具を自作したそう(寿建設 公式noteより)
実際に土を重機で削ぎ落としている映像
こうした発想って、現場で毎日働く人にしか出てこないものだと思うんです。でも、そういう知恵を世の中に広げていくのはITの得意分野。実際にうちでもYouTubeやnoteでこうした情報の発信をしています。今後も、デジタルとアナログの“得意分野”をうまく使い分けてより良い環境を作って行き、建設業界の魅力を発信して行きたいですね。
次世代に向けた人材育成や、業界の魅力発信、そして働きやすい環境づくり。森崎さんの言葉には、現場で生きるからこそのリアルと、未来への前向きな視点が詰まっていました。寿建設、そして建設業界がどんなふうに進化していくのか、今後の展開がとても楽しみです。

【お話を伺った人】
森崎 英五朗(もりさき えいごろう)さん
寿建設株式会社 代表取締役社長
1968年生まれ。岩手県盛岡市で出生の後、福島県福島市で育つ。趣味は読書で、時間さえあればずっと本を読んでいられるほどの読書家。自社だけでなく建設業界全体の魅力の発信にも積極的で、複数の省庁が合同で開催した第3回インフラメンテナンス大賞ではその功績が認められメンテナンスを支える活動部門にて優秀賞を受賞。
・寿建設株式会社ホームページ
・寿建設建設公式note「寿goodob」